Winter work for artists
アーティストの冬仕事
アーティストの冬仕事
生活様式が変化する社会において、衰退しつつある伝統や文化は失くなっていく方が自然なのかもしれません。 このプロジェクトにおけるアーティストは、次の人へ受け渡すため一時的に伝統産業などの技術を継承しストックする、装置やプラットフォームとしての機能を持っています。
アーティストの冬仕事 | 金井神ほうき
〈アーティストの冬仕事〉は伝統産業・名産品として販売されていた「金井神箒」が市場から消えた事から端を発するプロジェクトです。組合最後の箒職人から、素材となるホウキモロコシの種を譲り受け、素材の栽培・作り方を一から習い、研究を続けています。かつての農家の冬仕事になぞらえた〈アーティストの冬仕事〉では、失われていくものを復活させようとする事で生じる矛盾とも向き合いながら作品を展開しています。
金井神ほうき
山形県長井市の金井神(かないがみ)地区で作られていた箒。材料となるのは「ホウキモロコシ」というイネ科モロコシ属の一年草で、金井神ほうきは、胴巻きの部分までホウキモロコシで編み込むという全国的にも珍しい形状の和箒です。
江戸時代中期の冬に旅人が金井神で一宿一飯を求め、翌年の春にお礼としてホウキモロコシの種と箒の作り方を伝授したのが金井神ほうきの始まりといわれています。夏に収穫したホウキモロコシを材料に、農家の冬仕事として長井に広まっていました。
ホウキモロコシの種
2017年、御息女の手引きもあり、長井ほうきの最後の組合員だった竹田惣一氏*からホウキモロコシの種を譲り受けました。村上家の裏にある畑にて栽培を開始。ホウキモロコシは、5月下旬頃に種を植え、7月下旬~8月上旬に収穫します。 *竹田惣一氏は、2018年ご逝去

山形ビエンナーレ2018
失われつつある金井神ほうきについて広く伝える為、また調査を進める段階で気づいた現代社会の課題点について作品化。山形ビエンナーレに出展しました。 金井神箒が衰退していった大きな理由は、生産者の減少と高齢化です。日本が戦後の高度経済成長期によって、箒を必要としない生活様式に変わり、冬仕事として出稼ぎに行く農家が増えたことに由来します。手間暇がかかり、質の良い箒であるのにも関わらず安価で販売され続けたことが、さらに継承者不足に拍車をかけたようです。 そういった背景がありながら、2000年代ごろから伝統産業の復興ブームなどが起こり、行政の支援で、若手育成に力を入れていったようですが、結果は結びつかず、本気で継承する人材は生まれませんでした。 金井神ほうきを巡る一連の流れが、シルバー世代が無意識的に若者たちへ負荷を与える社会構造を思わせることから、箒を逆ピラミッド型に吊るすインスタレーションを制作しました。展示に使用した約300本の金井神ほうきは、長井市民から譲渡または借用しました。その数の多さからは金井神箒に対する潜在的な渇望が窺えました。

ホウキモロコシの栽培と素材
金井神箒の販売を念頭に置き、安定したホウキモロコシの栽培と技術の向上に苦心。栽培に関しては、農家の方からさほど難しくないと言われましたが、本業が農家でないアメフラシメンバーでは、日々の水撒きや除草をすることさえ大変で、さらに間引きや株分けなど、畑仕事に慣れていない人でなければ戸惑うことが多く、探り探りの栽培でした。それでも、種植えから苗植えへの移行や植える間隔など、様々なシチュエーションを試し、最適な栽培方法を模索。毎年10本程度の座敷箒を製作できる数量の収穫が可能になりました。 また製品化に当たり大きな障壁となったのは、金井神ほうきの生産が絶盛紀だった頃(昭和中~後期)に使われていた材料の殆どが廃盤となっていることでした。かつては材料を行商が売りにきていたとのこと。金井神ほうきを再現する上で、他の材料で代用していいものか。それとも現代に合わせた形で復元することが正解なのか。メンバー内で話し合い、今手に入る材料で新たな金井神ほうきとして生まれ変わらせることになりました。
アーティストの冬仕事 2020
アーティストの冬仕事 2021
アーティストの冬仕事 2022
アーティストの冬仕事 2023
#Winter work for artistsのSTORY
箒から未来を問うNext newness
展示「アーティストの冬仕事」8BOOKs SENDAI
2020金井神ほうき成果展「アーティストの冬仕事」
みちのおく芸術祭山形ビエンナーレ2018